高齢出産と子育て

母性とは(私の解釈)

女の人は赤ちゃんを授かると母性が出てくる。

とよくいいますが、私は残念なことに全然実感がわかないまま臨月を迎えました。

おなかに今の子がいた10か月間、毎日の体の異変にいちいち驚き、刺激され、経験することで頭が一杯でした。

コーヒーは1日1杯、アルコールは飲まなかったし、タバコも吸わないけれども、仕事もフルタイムはおろか夜間勤務もこなし、産休ギリギリいっぱいまで特に体調も崩さず働きました。

もちろん、ぼんやりと嬉しいし、すごいことだと思うのだけれども、産婦人科やプレママセミナーで言われる「おなかの赤ちゃんに話しかけて下さいね」なんて言われても、何を話しかけたらいいんだと考える始末でした。

おなかの赤ちゃんの負担になることこそしなかったけれども、胎教とか、ママの心の準備とか、どこか他人事で、生まれてくる子はどんなんだろうくらいしか考えてなかった気がします。

産休中も体調は良く、毎日3食作り、これから一人でしばらく生活するであろう旦那のために料理した食べ物を冷凍保存したり、実家に里帰りすれば、毎日実家の隅々まで掃除したり、仕事を始めた20代からこんなに休みを取ったことがなかったので、自分の休みを満喫してました。

予定日より10日過ぎた日、42時間の難産の末、我が子は生まれてきました。

産まれてきたら、いきなり夜中に2回起こされて授乳しなきゃいけなかったり、おっぱいが出ないことに悩んだり、私の病室に移ってきた我が子は夜通し泣いてたり、想像を絶する大変さでした。

難産だったため体力も消費していた上に、お尻のあたりは痛いわ、骨盤は緩んでてぐらぐらして立てないわ、夜泣きで眠れないわで、産後うつとはこれなのか…と一人闘っていました。

その後実家に滞在しても、結局夜泣きに対応するのは母である自分で、日中も両親は働いているのでいないし、土日に訪ねてくる旦那も、夜泣きの対応に関しては戦力外で「…寝ちゃうむにゃむにゃ」といいつつ寝てしまい、誰にも頼れず、甘えられず辛かったことを覚えています。

うちの子は、いまいちな容姿の私といまいちな容姿の旦那の掛け合わせにもかかわらず、とてもかわいいお顔で、本当に可愛い!とは思いこそすれ、やはり私に母性なる余裕は出てこなく、とにかく毎日、この子が死なないようにミルク飲ませなきゃ、ゲップさせなきゃ、寝かせなきゃ、お風呂入れなきゃで、やりたいことよりやらなければいけないことの多さに忙殺されてました。

我が子が、寝てくれてすやすやとしているときだけ「可愛い~」と思う余裕が出て、それでも生後5か月になれば今度は離乳食メニューを考える毎日だし、うんちが出てないとか、湿疹が出たとか、ワクチン打たなきゃとか、比較的バタバタしてました。

それでも、5か月を過ぎたあたりから、よく笑うようになってきて、私なんか母として認識されてないんじゃないかと少し悩んでいたのに、夜寝る前の布団で子供と私の写真を撮っいた旦那が

パパ
ほら見てママこの写真。〇〇ちゃん(←子供の名前)ママと一緒でいいでしょ~って顔してる

と、写真を見たら、満面の笑みでクシャっと笑っている顔がありました。

この顔を見たとき「あぁ。今までの努力は報われた」と思いました。

このことが、私は母性がない母親だけれど、この子は私のことを必要としてくれている、この子は私のことが大好きなんだ、という確信に変わりました

その後、1歳で保育園に預けて、子供への配慮が足りないと保育士から指摘されたり、昔の良い母親世代の方からは「こんな小さい子供預けて仕事なんて…」のようなことを言われながら、仕事、家事、育児に追われて毎日バタバタしながらもう子供は4歳になりました。

3歳ころから、ペラペラと言葉をしゃべるようになった子供は、「ママとパパが一番好き」とか、「ママのこと大好きだよ」とことあるごとに言ってくれるので、こんな私でも、子供にとっては大切な存在なんだなぁと感じてます。

そして最近の私には母性があると思います。他人の赤ちゃんを見ても可愛い~とおもいます。

そこで何が言いたいかというと…

母性とは、女性だからあるものでもなく、妊娠したからあるものでもなく、出産したからといって発生するものでもなく、子供と毎日一緒に過ごしてお世話していく中で母親の中に自然に育っていくものだ

とわたしは思います。

そういえば、独身の時こんな本を読みました。

予定日はジミーペイジ  角田光代 著書

この本の主人公も、妊娠を告げられた時に戸惑ったタイプの女性で、果たして子供が欲しかったのかよくわからないというところでずっとモヤモヤしています。でも、予定日が近づくにつれ、お腹が大きくなるにつれ、主人公の気持ちに変化がみられてきます。いろんな人との関わっているうちに、「赤ちゃんはこんなにも周囲を明るく変える力がある」と、妊娠してハッピーになることがこういうことだったのかと、自身の体験から気づきます。

この本の主人公の気持ち、読んだ当時は自分に関係ない分野だったので「ふーん」て感じでしたが、出産した今となっては、よくわかりますね。

ちょっとずつ、ちょっとずつ育っていくものなんですよね、母性も。

独身の時に読んだ本ですが、この本の著者の角田光代さんは妊娠の経験がないにも関わらずこの本を書き上げたということを後で知り、小説家ってすごいんだなと思ったことを思い出しました。

コロナ渦で暇な年末年始を過ごす予定の方、これから出産される予定の方、そういう方が周りにいらっしゃる方、もしよかったら一読されてみてはいかがでしょうか。

面白い小説です。

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